総  括

平成28年度は熊本地震に始まり、それこそ各支援センターを始め多くの幼児関連施設で大なり小なりの被害が出た年となりました。ライフラインが被害を受けた地域は広範囲にわり、故に長らく混乱が生じました。そればかりではなく、4,200回を越すと言われる余震が我々を落ち着かせる事なく更に不安にもさせていきました。

それでも予定していた総会を約一ヶ月延期して実施。同日開催した公開講演会では「防災教育の市民団体 ゆりあげかもめ」の会長である佐竹 悦子先生(元宮城県名取市閖上保育所所長)にお越しを頂き、『大切な命を守るために ~東日本大震災を経験して~』と題して緊急にご講演を賜りました。

大震災が如何なるものであるのか、経験して初めてわかったというのが皆の本音ではなかったでしょうか。事実、余震収まらぬあの混乱の中にあって沢山の方が来場された事はその証だったと思います。そういう意味でも大変意義ある講演でした。

熊本子育てネットの研修主力であるカウンセリング研修(年間5回受講で終了)、そして子育て支援スキルアップセミナー(年間5回受講で終了)においても同様に被災地であることを意識して、カウンセリング研講師の杉田先生(福岡県立大学名誉教授・元日本交流分析学会理事長)、そしてスキルアップ研講師の山田先生(子どもと保育研究所・ぷろほ 所長)にはいつもと違う要素を取り入れていただきながら、子どもと保護者の支援のみならず、支援者(保育士)の為の支援ということにまで配慮した研修内容を頂きました。皆が等しく被災者となった今回の震災はやはり平常ではなく、だれもがケアを必要とする状態ではなかったかと思いました。

子育てコーディネーター養成講座(年間4回受講で終了)においては全体監修として吉田道雄先生(熊本大学教育学部名誉教授)をお招きして、地域コーディネーターとして必要なリーダー論を学び、更に野村直子氏(new education Little Tree代表・森の幼稚園全国ネットワーク運営委員) や助産師であり「産後ケア」の提唱・実践者の1人である福島富士子(東邦大学大学院教授・医学博士)先生を招いて全国の様々な先駆的試みをたずねる事が出来た研修会になりました。

全国組織である日本子ども子育て支援センター連絡協議会(通称:日本子ども子育てネット)においては9月に第7回全国大会が千葉で開催され、いよいよ全国組織が軌道にのった感がありました。熊本からもこの全国組織へ役員を送り出しており、益々全国の仲間との連携が、そして課題への協議が進んでいくことを会員園の皆さんと共に期待したいと思います。

最後になりますが、平成30年度より保育所保育指針が改定されます。中でも子育て支援が「章」立てて示されてある事、これは際立って見えます。今後本格的に各園の子育て支援力がその園の評価として問われてくる、いよいよそういう時代になっていくとも読み取れます。

さて、現在子育て支援は認定子ども園においては「義務」とされ、保育所においては「努力義務」となっています。このことの意識の違いは昨年度の総括の中でも指摘していますが、後々問うてくる意味が大きくなりはしないでしょうか。

今後の時代の流れを読むならば、熊本子育てネットが会員園に果たすべき役割、即ち熊本の子育て支援力の全体的な底上げという研修団体としての使命は大きくなると考えます。(会員園の一層の研修参加、そして特にセンター長の意識改革が求められます。)

(文責:橘 孝昭)