御 挨 拶

熊本県地域子育て支援センター事業連絡協議会

       会 長 小 岱 紫 明

 

数年前にイタリアのレッジョエミリアの研修に参加する機会がありました。イタリアの街の中央には、広場があります。地域の人達が、毎日集い雑談したり市を開いたりして、日常の生活に欠かせない場となっています。

同様にレッジョエミリアの乳幼児施設にも、園舎の中央に、交流できる広場が設けてあり、保護者、地域の人がよく集まり子どものことについて話し合っています。レッジョエミリアに大きい影響を与えた教育思想家、ローリス・マラグッツィは、『子どもが地域社会で誰からも見えること、地域社会の発展のために乳幼児教育が不可欠』と公言し、乳幼児教育を市民生活の中心に位置づけしました。すべての人が傍観者ではなく関与しているという当事者意識、参加者意識を高めることが大事であると。

レッジョエミリアの乳幼児教育施設には、市の教育方針が掲げられ、『教育は、すべての人、すべての子どもの権利であり、同様にコミュニティの責任である』とあり、子育てに関して、地域の責任を明確にしています。これらの教育方針を実践するために、実践と理論の強力な橋渡し役であるペタゴジスタという役職があり、職員や保護者とヴィジョン(展望)とミッション(使命)の理解を確認し合い、スタッフトレーニングを行なっています。このようなレッジョエミリアの考えは、私たちの今後の子育て支援のあり方を考えるうえで、貴重な示唆を与えてくれます。

当協議会は、平成10年に県下の支援センターの要望により設立された研修団体です。爾来、20年以上に亘り子育て支援センターの職員の資質向上を目指して、子育て支援をテーマとして、研修を行なってきました。カウンセリング研修の受講生は延べ人数、8000人近くになろうとしており、各子育て支援センターの後方支援としての役割を果たしてきました。これも会員の方々の献身的なご尽力の賜物かと感謝申し上げます。

今後も当協議会が、県下の子育て支援センターの方々の交流の場、意見交換の場となり、共に課題を共有しあえたらと思います。さらには子育て支援のミッションとヴィジョンを確認し合い、思いを一つのベクトルに合わせることが出来たら思います。

いよいよ今年から保育所保育指針、認定こども園教育保育要領が新たに施行されます。「子育て支援」が「章」立てで記載され、その比重は大きくなっています。
子ども子育て支援、家族支援、地域支援と、ますます子育て支援センターの地域での拠点事業としての役割が求められてきます。

平成5年に子育て支援センター事業が始まり、多数の子育て支援の団体が生まれては消えていきました。今日まで続いているのは僅かです。子育て支援センターの持つ、継続性、地域の関係性の構築、各園で培ってきた子どもたちの文化など、ソーシャルキャピトル(社会的資産)として有形無形の資産があります。これらをあらためて見直し、地域の拠点として機能の充実を共に進めていきたいと思います。本年も、皆様方のご協力を宜しくお願い申し上げましてご挨拶と致します。